一周忌

今日は19年目になる阪神大震災の日で神戸市役所周辺では追悼の行事や集会があり
県の事務所で作業をしていると朝早くから夕方になっても絶え間なく歌や音楽が聞こえていました

私にとっては 1月17日は昨年亡くなった師匠のご命日でもあります

「35年も師事していると親子みたいでしょ!」とよく言われましたが全くそうではありません
先生はとても厳しい方でお会いする日はいまだに緊張していました
作品が下手でも叱られることはありませんが礼儀や義理・不義理 道義的なこと 言葉の受け答えや筋が通らないことなどは瞬時にビシッとズバッと正されます
口下手で上がり症の私はますますビクッとします
高校を卒業してからも毎週会えるようにと仲良しの友人に誘ってもらって通い始めてから今まで ずっとこんな感じです
優しい人はたくさんいますが大人になってからも 厳しくてビシッと叱ってくれる人はこの年になるととても希少で襟を正し姿勢を正せる有難い存在です
それでいて情にもろくてお人好しの先生なのです

交通事故で大けがをされてから次第に筆を持たなくなられていつの間にか 毎月のお稽古に通っているのは私一人になってしまいました
数年前に高齢者用マンションに移られてからは全く筆を持たなくなってしまわれましたが作品の批評は変わらず辛口でした
最後にお話ししたのは年末に姪御さんの近くの病院に転院が決まる2日前でした
「作品締切もせまってるし 先生に見ていただかないと自信がなくて手本書きも出来ないし締切にも間に合わないし あれもこれも出来ないことばっかりなんです!」と病床の師匠に泣きごとを言う私に
片手をゆっくり動かしてヤッホーのしぐさをされたので耳を口元に近づけてみると
「ガンバレー」
と声になるかならないかの息遣いが私の耳に触れました

以来壁にぶつかったとき 途方に暮れた時 目を閉じてこのかすかなエールと息遣いの感触を思い出しています

前衛書作家の先生ではありますが 私は先生の仮名作品が大好きでした
この時期にちょうどいい作品を所有しているのでご紹介します

「あらたまの としたちかへる あしたより
またるるものは うぐいすのこえ」
1984年12月 有馬尚苑ー書の小品展ー出品作

「游」1998年1月 新春の書展出品作